ADC(Antibody-Drug Conjugate:抗体薬物複合体)は、近年のがん治療において最も注目される新薬カテゴリーの一つです。「がん細胞だけを狙い撃ちにする」という革命的なコンセプトにより、従来の化学療法の課題だった「正常細胞への毒性」を大幅に低減させることができます。

ADCとは?3つの部品で構成される「魔法の弾丸」

ADCは次の3つの部品が組み合わさった複合分子です。

  1. 抗体(Antibody):がん細胞の表面にある特定のタンパク質(HER2・TROP2・HER3など)を認識して結合する「ターゲティング部分」
  2. リンカー(Linker):抗体と薬剤をつなぐ「橋」の部分。がん細胞内に入ると壊れる設計になっている
  3. ペイロード(Payload):細胞を殺傷する強力な薬剤。抗体によってがん細胞に届けられることで、正常細胞への影響を最小限にする

この仕組みは「ミサイル誘導型の抗がん薬」とも例えられ、抗体がミサイルのガイダンスシステム、ペイロードが弾頭に相当します。

従来のがん治療(化学療法)との違い

項目通常の化学療法ADC
作用する細胞がん細胞+正常細胞主にがん細胞(標的発現細胞)
脱毛・骨髄抑制高頻度抑制されやすい
有効性の条件一般的標的タンパクの発現が必要

主なADC承認薬と対象がん種(2025年時点)

  • T-DXd(トラスツズマブ デルクステカン/エンハーツ):HER2陽性乳がん・HER2陽性胃がん・HER2発現非小細胞肺がんで承認。第一三共・AstraZeneca共同開発。
  • カドサイラ(T-DM1):HER2陽性乳がんで承認済み。ロシュ開発。
  • Dato-DXd(TROPION):TROP2標的ADC。非小細胞肺がん・乳がんで開発中。第一三共・AZ。
  • シグボタタグ ベドチン(SGN-B6A):インテグリンβ6標的。肺がんで開発中。Pfizer。

日本で実施中のADC関連治験

現在、日本国内でも複数のADC治験が参加者を募集しています。

よくある質問(FAQ)

ADCはすべてのがんに使えますか?+
いいえ。ADCは特定の標的タンパク質(HER2・TROP2など)を発現しているがん細胞にのみ有効です。そのため、まず生検や血液検査で標的タンパクの発現を確認してから使用が検討されます。
ADCの副作用はどんなものがありますか?+
ADC固有の副作用として、間質性肺疾患(ILD)、末梢神経障害(ニューロパチー)、眼毒性などが知られています。ペイロードの種類によって副作用のプロファイルは異なります。
ADCは日本で保険適用されていますか?+
T-DXd(エンハーツ)はHER2陽性乳がん・胃がん・肺がんで保険適用されています。Dato-DXdやシグボタタグ ベドチンはまだ国内未承認で治験段階です(2025年時点)。
ADCの治験に参加するにはどうすればよいですか?+
本サイトの各治験記事のページから実施施設の連絡先を確認いただくか、LINEで当メディアにお問い合わせください。担当医への相談も有効です。