この試験が目指すもの
うつ病患者の約30〜40%は2種類以上の抗うつ薬を試しても十分な効果が得られない「治療抵抗性うつ病(TRD)」であることが知られています。 TRD患者は自殺リスクが高く、社会的・職業的機能も著しく低下しており、医療ニーズは極めて高い状況です。
現在のTRDへの補助療法には非定型抗精神病薬(アリピプラゾールなど)や スプラバトー(エスケタミン鼻腔スプレー)がありますが、 副作用や使用の難しさから全ての患者に適用できるわけではありません。 NBI-1065845はこれらとは全く異なる「GABA系神経伝達の調整」という新しいアプローチで挑みます。
基本情報
| 試験番号(NCT ID) | NCT06966401 |
|---|---|
| フェーズ | フェーズ3(長期非盲検安全性延長試験) |
| 試験ステータス | 募集中(Recruiting) |
| 対象疾患 | 大うつ病性障害(MDD)— 治療抵抗性(2剤以上で不十分な反応) |
| 対象患者 | 18〜65歳、MDD診断、現在の抗うつ薬レジメンに不十分な反応 |
| 介入内容 | NBI-1065845(用量漸増)+ 既存の抗うつ薬(継続) |
| 主催スポンサー | Neurocrine Biosciences(米国) |
| 実施施設数 | 87施設 |
| 登録予定人数 | 850名 |
| 試験期間 | 最長52週(長期安全性評価) |
評価指標
主要評価指標(Primary Outcome)
| 長期安全性・忍容性 | 有害事象、重篤有害事象、投与中止に至る有害事象の発生頻度(52週間) |
|---|
副次評価指標(Secondary Outcomes)
| HAMD-17スコア変化 | ハミルトンうつ病評価尺度(17項目)の変化量 |
|---|---|
| MADRS スコア変化 | モントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度の変化量 |
| CGI-S(重症度)変化 | 臨床全般印象重症度スコアの変化 |
| 認知機能(DSST) | 記号数字照合テスト(認知機能への影響評価) |
NBI-1065845とGABA-Aδ受容体
① GABAとうつ病の関係
GABA(γ-アミノ酪酸)は脳内の主要な抑制性神経伝達物質です。 近年の研究から、うつ病患者では前頭前野・海馬領域でのGABA神経伝達が低下していることが示されており、 この「GABA低下仮説」が新しい治療標的として注目されています。
② δ(デルタ)サブユニット特異性の重要性
GABA-A受容体には多様なサブユニット(α、β、γ、δなど)が存在します。 NBI-1065845はδサブユニットを含む「シナプス外GABA-A受容体」を選択的に調整します。 このサブユニットは脳の興奮-抑制バランスの「持続的な調節」に関与しており、 従来のベンゾジアゼピン系(γサブユニット)とは異なり、 鎮静・依存性のリスクが低いとされています。
③ Neurocrine独自のアプローチ
NeurocrineはINGREZZA(バルベナジン、遅発性ジスキネジア治療薬・FDA承認)で培った 神経系トランスポーター/受容体モジュレーション技術をうつ病に応用しています。 同社のもう一つのGABA関連薬「ZURZUVAE(ズラノロン、産後うつ)」の知見も開発に活かされています。
参加できる方・できない方
✅ 参加できる可能性がある方
- 18〜65歳
- 大うつ病性障害(MDD)の診断を受けている
- 現在の抗うつ薬治療(2剤以上)で十分な効果が得られていない
- 先行フェーズ2/3試験(NCT05154721)を完了した方、または新規参加者
✗ 参加できない主な条件
- 双極性障害・統合失調症などほかの精神疾患がある方
- 活動性の自殺念慮がある方(安全性上の優先措置)
- 物質乱用障害(アルコール・薬物)のある方
- ECT(電気けいれん療法)やTMSを最近受けた方